毎週木曜日はゼミの日だが、所属するゼミは2,3限とお昼休みをまたがった時間に設定されているため、毎回昼食を食べる必要がある。普段木曜以外の授業のために登校する際は食べないことも多かったが、一般に(和気あいあい風に会話しながらお利口に)食べることが当たり前の人たちを前に読書は骨が折れるし、不毛な議論と沈黙が交互に続く時空間の中でお腹の音が響くことに恐れおののいていたので、木曜日は何かしら胃に入れなければならない。

 3年生の頃は金銭面・栄養面を考慮して毎回お弁当を持参していた。といっても、千切りになりきれない細さのキャベツを敷き詰めたり、特売品の鶏胸肉と卵を茹でたものをその上にのせたり、といったあたたかみのないものであるが。それを100円均一ショップで購入したシルバーの円形のタッパーに押し込んでいただけ。ドレッシングは基本買わないため塩・こしょう・酢等で味を付けていたのでその残滓が残ること、フォークとアルミがキンキンと触れる硬い音が不快だった。それに加えて、毎週毎週このつまらないコンテンツを用意する作業にも疲労を感じていた。冬場はキャベツが法外に高騰し調達できなくなっていた。朝余裕をもって起きることに自信がなく、大抵は前日の夜に用意し冷蔵庫に保管しておいた。そして、マイメロディの巾着に包んでリュックに入れ登校し、汁漏れを発生させていた。

 よって、今年は弁当作成によるストレスを駆除するために作らないことに決めた。大学や町を行き交う人びとと同じようにコンビニで買うのだ、と夢見た。お金やカロリーや糖質を気にすることによる時間のロスをどうにかしたいと思っていたので、それを克服するひとつの治療になると思った。そういうことで、今日も家から学校までのどこかの店舗で購入しようと思い、いつもより1もしくは2本早い電車に乗り込んだ。

 しかし、最寄りのスーパーに寄っても何も購入せず退店、高田馬場で下りたあと歩きつつ出くわすコンビニ(セブン・イレブン、100円ローソン、ノーマルローソン、ファミリーマート)に入ってサンドイッチを手に取るも手ぶらで退店。

 何を買えばいいのかわからない。醜い体型のことを考えればサンドイッチは糖質が高い。サラダだけで済ませば「それだけ?」と指摘されるかもしれない。米は食べたくない。月収1万なので200円程度で済ませたい。何を買えばいいのかわからない。そのまま決めることができず、2限でのお腹の音を防ぐために無料クーポンと引き換えに得たチョコレート大豆菓子を口に放り込んだのみで、ストレートに歩いた場合の2倍はかかったであろう馬場歩きを終え、教室にたどりついた。

 結局、お昼は生協のコンビニで220円のBLTサンドを購入して食べた。具が申し訳程度にしか挟まれていなかった。220円。

 

 帰路と帰宅後は、うずまきソフトのことを考えていた。

 某ウェブマガジンのおそらくインターンOBOGであろう人びとの、1ヶ月の消費記録なるものを見た。どこで購入したのかという店舗名や地名、金額も記載されていた。彼らはどうして選択できるのか。入店し陳列棚に向かい商品をとりレジに並び貨幣と交換という一連の作業がなぜスムーズにできるのか。